自由制作研究
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このニュースレターは、様々なものを制作し、制作することそれ自体を考える【おかふじりんたろう】が、毎月1日と15日にお届けする、制作日誌です。
「創造性」をテーマに、素材や道具との連関の話、はたまた身体の制作まで、話題は多岐にわたります。
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自由制作研究──2023年8月15日号
■目次
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… 1. 最近の制作
… 2. 身体運用
… 3. 今後の自由制作の予定
… 4.感想・質問
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1. 最近の制作
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少しでも時間があれば、何かを作りたいおかふじ。いろいろなものを作っていく中で、新しく知ったことや考えたことなどをお伝えします。
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三ヶ月くらい前から、ちょこちょこと指輪やバングルといった彫金に打ち込んでいます。全くの素人から始めましたが、一昨日にはリングストレッチャーという、指輪の直径を大きくする専用の機材を導入しました。しかし、せっかく良い感じに成形できていた指輪を見事に粉砕し、「こりゃ参ったな……」という無力感と、「指輪の直径を大きくすることを見越して、事前にもっと厚みをもたせて金属を切り出すべきだな」という大きな学びをちょうど得たところです。
最初は、真鍮を使ってリングやバングルを制作していましたが、真鍮はアクセサリーに使われる金属の中でもかなり固い。値段は安価で良いのですが、その加工の難しさから断念し、最近は主に銅を切ったり曲げたり叩いたりしています。そして、銅を使った彫金の中でも、今ぼくが取り組んでいるのは、緋銅という製法です。
緋銅とは銅を約1000度近くまで熱し、ホウ砂水溶液で急冷することで、鮮やかな赤色の皮膜を定着させるものです。(見たことない人はぜひ「緋銅」で画像検索してみてください。かなりクールです!)
なんでも江戸時代から伝わる日本の伝統技法らしいのですが、まだ文献などに直接あたっていないため、詳しいことはよくわかりません。
兎にも角にも、緋銅の鮮やかな赤色に一目惚れしてしまい、日々研究しているのですが、これがなかなか難しく、加熱前の磨きや油分の拭き取りが不十分だと、ムラができたり黒くなってしまいます。また銅の融点は1085度なので、火力調節を怠ると急冷する前にせっかく成形した指輪自体が溶けてしまいます。
これまでに、この緋銅を30回くらい練習してるのですが、結局まだ1回も成功していません。長い戦いになりそうなので、ストックとして加熱用バーナーのガスボンベを16本追加購入しました(笑)。
普通の彫金作家というのは、様々な種類のアクセサリーを作れるように様々な練習をするものですが、僕は別に彫金作家として生計を立てていくつもりもありませんし、そもそも彫金作家になりたいと思ったこともありません。知り合いの指輪を見る機会があり「へー、なんか自分も作れるかも」と思って、ただなんとなく取り組んでいるだけです。
まずは軽いノリで手を出し、その制作過程の全体をザックリ掴み、いろいろと彷徨う中でビビっときたものに一点集中する、という流れで今に至るわけですが、経験上このやり方が一番早く上達すると思っています。DTMによる音楽制作を始めた際も、コード進行とか細かい音楽理論を暗記するのは後回しにして、まずキーやスケールだけを意識してササッと1曲完成させる、という経験がかなり大きかったように思います。
ちなみに、定番のシルバーアクセサリーに関しては、多くの先輩彫金作家達がいるため、緋銅の比ではないほど、ネットにたくさんハウツーが公開されています。ただ、シルバーは純銀が素材なわけですが、純銀はその素材自体が高価です。これでは、失敗することへの恐怖心が生まれてしまったり、失敗したときの金銭的・精神的な損失が大きいため、気軽に試行回数を増やすことができません。一方、銅は真鍮ほどではありませんが、純銀に比べれば遥かに安価です。従って、ガンガン挑戦しガンガン失敗することができます。ぼくのような「お金をかけたくない素人」にとっては、銅から始めるのが良いと遡行的に気づきました。
また、緋銅は技術的に高いハードルがあるので、小さい指輪であっても最低五千円前後と、なかなかいいお値段です。しかし、銅自体の原材料費はかなり安いため、一度この技術を身につけてしまえば、利益率の良い商売になるかもしれません。もちろん、緋銅はなかなか量産できないので、大きな売上にはならないかもしれませんが、ぼくのような「いつかお小遣い程度は稼げるようになったらいいな」という人間にとっては、もってこいの製法なのです。「こんな駆け出しアマチュア彫金作家のリングを誰が買うのか」という最も大きな問題はありますが、とりあえずそういった見通しを立てておくだけでも、自分が調子に乗ってきて、手が動くきっかけになるのだから、どんどん自分を甘やかしています。
最初は単に魅惑され、修練を重ねるうちに、ちゃっかりマネタイズも狙っていく。このような、仕事でもなく趣味でもない、まさしく遊び半分のいい加減なスタンスで、常にいろいろやっていくことが、面白いと感じるここ数年です。
2. 身体運用
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「有給休暇」という概念が存在しないフリーランスにとって、文字通り体が資本。というわけで、日々「制作の土台である身体をどう運用するか」を意識しているおかふじが身をもって調査・実験したレポートをお届けします。当然、身体は人それぞれ違いますし、健康にまつわる情報は玉石混交ですので、あくまで試行錯誤の「ひとつのサンプル」としてお読みください。
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ここ二週間ほどで、距離の近い人が精神的な病に倒れたので、様々な手続きを代行したり、コロナ禍明けのお盆ということで親戚が数年ぶりに来たりと、かなりバタバタしていました。
ぼくは、自分のことを普段は妖怪だと思っていて、人と会ったりするときは「よし、今から人間のフリをするぞ」と思って家を出るのですが、約十日以上連続で人間のフリをし続けると、浅い呼吸、集中力の低下、イライラしやすくなる、といった現象が現れるようになります。ただし、人と会うことが嫌いなわけではなく、自分で「おしゃべり会」と称して友人知人を誘い、一対一で一時間くらい適当に近況報告的なおしゃべりする日を、一ヶ月で七日程度設けるくらいには、人と会って話すことが大好きです。
しかしやはり、無意識での疲労が蓄積し、それが顕在化してしまうのかどうかわかりませんが、とにかく約十日以上連続で人と会うと、体に影響が出てきます。これは大学生のときに、心身の状態、天気、湿度、気圧、睡眠時間や運動時間……などを毎日細かく記録し、グラフ化していたのですが、そのとき発見したぼく専用の法則です。
そして話を戻すと、ここ二週間は冒頭のようにまさしくバタバタしており、症状が体に出始めたので、丸二日ほど「真の妖怪モード」で居続けるため、スケジュールを調整しました。
「真の妖怪モード」といっても、スマホの通知をミュートにして、「何も決めない」という一日を徹底するだけです。たとえば、朝ごはんを食べるのか食べないのか、食べるとしたら、自炊するのか自炊しないのか、ということを一切決めません。ただその瞬間瞬間のノリで、食べたり食べなかったりを決めます。ダラダラするのか、調べ物をするのか、映画を見るのか、出かけるのか……あらゆることを、その瞬間のフィーリングに任せてしまうのです。
仕事先との連絡も、友達との連絡も、すべて同じ端末でできてしまうことが象徴しているように、どんどん仕事とプライベートの境目が無くなっている現代社会において、「休む」ということを真剣に考え直さなければなりません。ビョンチョル・ハンの『疲労社会』や、牧野智和の『自己啓発の時代 「自己」の文化社会学的探究 』に詳しいように、現代社会では休日さえも「自己投資」へと駆り立てられるような価値観が蔓延しています。だから、せっかく「休むぞ」と思ってダラダラ映画を見ていても、夕方くらいになれば「あれ、本当に今日はなにもしてないぞ……」「もっと違うこと“やれ”ばよかったかな……」という、罪悪感を覚えてしまうものです。
そこで「なにかをやる平日」or「なにもやらない休日」、または「なにかをやる平日」or「有意義に過ごす休日」、といった二項をまず辞めました。そして、「なにかをやるかもしれないし、なにもやらないかもしれない、というランダム性が高くて且つ誰にも会わない日」=休日 と、ぼくの中で休日を再定義しました。
だから、食事を缶詰などでパパっと済ませてひたすらゴロゴロする休日もあれば、パッと思いついたことを調べたり、新しいことを始めてしまう休日もあるのです。どちらも、即興的にスケジュールが組まれるので、ぼくにとっては休日です。こういう休日の考え方を導入してから、かなり調子が良く、「人間モード」での疲れも取れやすくなっていると感じています。そう、この突発的なニュースレターも、もちろん休日の思いつきから始まっているのです。(こうやって書いてきて今気づきましたが、逆に言えばぼくの中で、事前に予定が決まっている非即興的な日=休日ではない、ということになるのでしょうね。)
3. 今後の自由制作の予定
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今後の制作予定をお話しします。考えたり言ってるだけで、取り掛かりに数年かかったり、内容が変化する可能性も十分あり得るので、話半分でどうぞ。
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友達とやっているラップグループ「MCベスト」の新曲MVを撮影し、編集し、公開までこぎつけたいと思っています。というのは、すでに曲は約6曲程度ほぼ完成しているのですが、如何せんMVの撮影は時間がかかるため、どんどん曲だけが溜まっている状態でして、早く手離れしたくて数週間ウズウズしています。
また、制作スタジオ「ULMR」として、アンビエント且つミニマル的なアルバムを作っていて、こちらも既に6曲できあがっています。作曲のとっかかりとなるアイデアもいくつかあるので、さらに3曲くらい作りたいところです。
それと、自宅で生地からピザを作ってみたいなと考えています。少し前までビシソワーズの研究をしていて、そこから派生しトウモロコシのポタージュもおいしく作れるようになったので、「このスープ達と一緒にピザでも食べたいなあ」と思ったのがきっかけです。研究と称して、先日も創作イタリアンレストランにて、久しぶりにピザを食べました(笑)。いろいろ作り方は調べていて、「下ごしらえの下準備」は着々としているのですが、思うにピザ作りのポイントは、①生地②トマトソース③火力、この三点さえ抑えればなんとかなるのではないかと睨んでいます。
その他
・いい加減、緋銅を成功させる
・ミシンでのジャケット制作のリベンジのために作り方をいろいろ調べる
・水墨画は「墨汁の準備がめんどくさいから続かない」とわかったので、筆ペンでなにかできないかやってみる
・陶芸用粘土を削る作業
……etc.
今後の二週間が楽しみです。
4. 感想・質問などありましたら、このメールに直接ご返信いただくか、マシュマロにてお送りください。

※次回以降のニュースレターで紹介するかもしれませんので、事前にご了承のうえ、お送りください。
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